米中関係占う上海ディズニーランド 中国の数少ない歩み寄り…米国文化を体験


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 「私が中国にもディズニーランドの建設が必要だと感じたのは、東京やフロリダのオーランドでディズニーに行った経験からだ」

 習近平国家主席(62)は昨年9月、訪問先の米シアトルで米中のビジネスマンを前にこう明かした。習氏が上海市トップの党委書記を務めていた2007年、沈みかけていた上海ディズニー計画を再び軌道に乗せた経緯をアピールしたという。その上海でいよいよ今年6月16日、アジアでは東京と香港に続き3カ所目、中国本土で初めてのディズニーリゾートが開園する。

 ◆休日は東京より高額

 上海ディズニーのテーマパークには、「シンデレラ城」のような城のほか、上海の伝統的な建築様式「石庫門」を採用した建物、中国伝統の演劇や雑技の要素も取り入れられた。米中の文化が混在する演出だ。総工費に約55億ドル(約6300億円)が投じられた。

 3月28日から発売される入場券は平日で大人が370元(約6500円)、週末や夏休みは499元(約8700円)。東京ディズニーランドとディズニーシーは4月から500円値上げされて大人が7400円となるが、上海はピーク時に東京よりも高くなる。

 それでも中国の経済界は強気だ。海通証券のアナリストは、上海ディズニーの入場者を初年度で1500万人と予想。3000万人を軽く超える東京には及ばないが、入場者の90%以上は中国国内からといい、宿泊や周辺の観光も含め、上海の年間小売売上高を4%押し上げると試算している。

 周辺の不動産相場も急騰が続く。地元紙によると上海ディズニーが立地する浦東新区の川沙地区では、住宅価格が5年で5倍になった。観光客を当て込んだホテル建設も進んでいる。

 さらに昨年12月、上海浦東国際空港を拡張する第3ターミナルの建設も決まった。昨年は延べ6000万人が利用した上海浦東国際空港だが、ディズニー効果で25年には8000万人に増加するという。

 ◆経済成長の大転換点に

 実際どこまでシナリオ通りに進むか不明だが、上海ディズニー開園は中国の経済成長にとり、大きな転換点になるかもしれない。

 海外の製造業誘致と輸出の拡大で築いた高度経済成長から、「新常態(ニューノーマル)」と呼ぶ低成長時代へのギアダウンで欠かせないのが個人消費だ。上海ディズニーが狙っている中所得層の家族連れによる消費行動は、周辺の不動産開発や航空、鉄道、高速道路など交通インフラ建設にも波及する。中国にとっては個人消費の広がりが経済を牽引するという、かつてない成長パターンに転換する上での象徴的なプロジェクトになるだろう。

 習氏が07年にそこまで見通して決断したのかどうか知る由もないが、現在はその重要性を強く認識しているはずだ。中国国家工商行政管理総局は昨秋、「米ウォルト・ディズニー商標権保護」に絞った異例の監視チームまで発足させた。

 かつて北京で「ディズニーのパクリ」と騒がれた遊園地が登場したことなどもあり、米側から要求された可能性も高いが、中国がここまで外国企業への“気遣い”を示した前例を聞いたことがない。米中が南シナ海や人権問題などをめぐって緊張を高める中で、中国の数少ない歩み寄りだ。

 ◆「ソフトパワー」の勝利

 米国からみれば上海ディズニーの開園は、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授(79)が指摘する「ソフトパワー」の勝利といえる。軍事力や経済力など強い姿勢を伴う「ハードパワー」に対置する概念として、米国的な価値観や文化の存在感を示すディズニーを、数千万の中国人が好感をもって体験できる場が誕生する。西側の自由民主主義とは価値観の異なる共産主義体制の国で、初めて開園するディズニーリゾートだ。

 人気の高いアトラクションである「イッツ・ア・スモールワールド」は上海でも作られるのだろうか。世界の各地で民族衣装をまとった人形がそれぞれの民族の言葉で歌う。肌の色や国籍、性別、言語の違いを乗り越えた世界を描いたディズニーの理念は、この国ではどう解釈されるのか。

 上海ディズニーの行方は今後の米中関係や中国の社会変化を占う上でも、欠かせぬ視点になりそうだ。(上海 河崎真澄)