中国が“爆買い”で、世界サッカー界を征服する日


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 中国がサッカーの分野でも“世界制覇”を狙っている――。荒唐無稽な笑い話に感じたかもしれないが、これはあながち的外れなことではない。

【中国スーパーリーグの勢いがスゴい】

 どうしてこういう話題を取り上げることにしたのかというと先日、ある在日華僑の有力者A氏から冒頭の文言について「中国共産党の上層部は本気だ」との熱弁を振るわれたからだ。酒席だったとはいえ、その場で気になったのでいろいろと掘り下げて聞いてみたところ、確かに中国政府の深謀遠慮が見え隠れする。

 非常に分かりやすいところから入れば、中国国内のプロサッカーリーグだ。2004年に創設され、近年目まぐるしい急成長を遂げている中国スーパーリーグの勢いは凄(すさ)まじい。この冬の移籍市場でも、世界トップレベルの選手たちを同リーグの主要クラブが次々と獲得して世界のサッカー界を驚かせている。

 昨年のAFCチャンピオンズリーグを制した広州恒大は今冬の移籍市場でスペイン1部リーグ(リーガ・エスパニョーラ)のアトレティコ・マドリードから移籍金4200万ユーロ(約51億円)を注ぎ込み、現コロンビア代表FWのジャクソン・マルティネスを獲得。

 また江蘇蘇寧はチェルシー(英プレミアリーグ)に所属していたブラジル代表のMFラミレスを移籍金2800万ユーロ(約34億円)で加入させ、さらにそのチェルシーが狙っていたシャフタール・ドネツク(ウクライナ・プレミアリーグ)のブラジル代表MFアレックス・テイシェイラを中国サッカー史上最高額となる移籍金5000万ユーロ(約61億円)で“強奪”した。同リーグの他主要クラブも凄まじい金額を投じ、世界の名だたる一流選手を競うように買い集めていった。

 その結果、今冬の移籍市場が2月26日に閉じられると、同リーグに所属するクラブが投じた移籍金が合計で実に3億3100万ユーロ(約405億円)もの巨額に達した。これは世界のプロサッカーリーグでトップ5と目されているリーガ・エスパニョーラや英プレミアリーグ、ブンデスリーガ(ドイツ)、リーグ・アン(フランス)、イタリア・セリエAを加えた中での「今シーズン世界最高額」となったとの報道も出ている。まさに“爆買い”だ。

●中国政府の狙いどこに?

 その中国スーパーリーグの主要クラブチームでオーナーとなっている企業の大半が巨大な資産を擁する同国国内の超有力な不動産グループ企業。中国は不動産バブルが崩壊しつつあると見られているものの、まだまだ不動産需要への依存度は高い。主要クラブに潤沢な資金が湯水のごとく沸いて出てくる背景には、こうした中国国内の不動産グループ系オーナー企業のバックアップ体制が整っているからに他ならない。

 オランダを拠点として世界148カ国にグローバルネットワークを張るプロフェッショナル・サービスファーム(知的専門家集団)の「KPMG」が今年1月に発表した調査結果によると、2011~12シーズンを100%とした中国スーパーリーグの観客数伸び率は、直近の2014~15シーズンで119.2%をマークしたという。人気面を見ても成長著しい同リーグに投資しようという国内企業は前出の不動産グループ系企業だけではなく、広州恒大の株式を50%保有している中国・電子商取引大手の阿里巴巴集団(アリババ・グループ)のように中国国内で新進気鋭と称される優良ベンチャー企業も同リーグ・主要クラブの有力株主として名を連ねている現状がある。

 実はこうした流れを前もってシナリオとして描き、国内の有力企業に率先して投資することをあおりながら中国スーパーリーグの急成長を後押ししているのが、中国共産党のトップ・習近平国家主席だ。サッカー好きを公言している同国家主席は2022年にカタールで開催されるワールドカップ(W杯)の後に自国でのW杯開催を狙っており、急失速している国内経済成長のカンフル剤としたい考えも持っている。そして同時に現在FIFA(国際サッカー連盟)ランキングで93位と低迷している中国代表チームを自国開催のW杯で優勝させることを本気で目論んでいるのである。

 それを具現化させる指針として、昨年2月末には国を挙げたサッカー底上げ策の「中国サッカー改革の総合方案」なるプランが周氏が主宰する国家改革グループ会議の中で採択された。これは2025年までには5万校以上の国内サッカー選手養成学校を創設して累計で15万人のサッカー選手を誕生させ、そのうちの3分の1を欧州のクラブに移籍ないし留学させるという内容のものだ。これについて前出のA氏は次のようにも打ち明ける。

 「このプランの内容をさらに補足すると、政府は中国スーパーリーグを近い将来のうちに世界トップ5のプロリーグを超越するレベルにまで引き上げ、そこで世界有数のスター選手に揉まれながら有能な指導者のもとでプレーする中国人プレーヤーのテクニックもジャンプアップさせようと計画している。

 これと平行して中国代表チームもFIFAランキングのトップ10以内にランクインさせるように大号令をかけている。それにしても、なにゆえ習近平国家主席は『サッカー』にここまでこだわるのか。世界各国に浸透しているサッカー人気が中国でも高まれば国民の士気も向上するのと同時に、中国サッカーのレベルアップによって他国の国民に対しても『強い中国』を強烈に印象付けることができる。中国政府の狙いはここにある」

●欧州クラブチームまで“爆買い”の餌食に

 周近平国家主席が唱えるサッカー強化・国家プロジェクトの矛先は中国スーパーリーグと中国代表の強化だけにとどまらない。この流れに乗じる形で中国国内の有力企業家たちが欧州のクラブチーム買収も加速させているのだ。昨年だけを見ても、まず1月には大連万達グループを率いる王健林会長がアトレティコ・マドリード(リーガ・エスパニョーラ)の株式20%を5200万ドル(約58億円)で取得。

 続いて同時期に北京合力万盛国際体育発展有限公司がオランダ1部リーグのADOデン・ハーグの株式98%を買い取り、同公司・王輝会長が同クラブ会長に就任。さらに同年5月には中国LED照明メーカー・徳普科技発展の傘下となっている香港企業がフランスの自動車メーカー・プジョーが出資していたサッカーのフランス・リーグ2部・FCソショーの全株式を700万ユーロ(約8億6000万円)で買収している。こうしたニュースは「欧州クラブチームまで“爆買い”の餌食になるのか」と世界のサッカー界を震撼(しんかん)させた。

 中国企業が欧州の名門クラブチームの経営参画に加わることができれば、中国人プレーヤーを加入させる段取りも付けやすくなる。そして多くのサポーターたちにも「オーナー=大国・中国」のイメージも印象付けられるだろう。これらの利点は周国家主席の掲げているサッカー強化・国家プロジェクトとも合致してくる。つまり中央政府の顔色を常にうかがい、かつ御機嫌も取りたい中国の企業家たちはこぞって欧州クラブチームへの投資に目を向けているのだ。

●サッカー強国にとって脅威!?

 前出のA氏は、本田圭祐が現在活躍中のセリエA・ACミランについても「中国の有力企業家が株式取得を目指そうと密かに動き出している」と指摘している。すでにACミランはタイ人実業家のビー・テチャウボン氏にクラブの親会社「フィニンベスト」の株式48%を4億8000万ユーロ(約587億円)で売却することで合意。しかしながら同氏の共同経営者が資金洗浄容疑で逮捕されたことなどから暗礁に乗り上げているとも言われており、ミランにも中国の“爆買い”の波が押し寄せる可能性は否定できない。

 まるでブルドーザーのごとくサッカー強化・国家プロジェクトを押し進める周国家主席の野望は果たして完遂されるのだろうか。そう簡単にうまくいくとは思えないが、13億人強の中国国民が「足球熱」に酔いしれて本気になったとしたら世界のサッカー強国にとっては大きな脅威となるかもしれない。

(臼北信行)